CATが握るカード屋の命運|クレジットカード業界の利益構造
このページで記載しているカード会社の「社名」は2005年時点のものであり、経年による合併などで現在では社名や商標名が異なる場合があります。2005年以降の社名変更などについては修正していませんので資料として扱う場合はご注意ください。
お店でカードを使うと、店員さんはPOSレジに似た機械にカードを「ピッ」と通します。
この端末機がCAT
正しくは、Credit Authorization Terminal(クレジットオーソリゼーションターミナル)と呼びます。
実際のところ加盟店にも利用客にもカンケーないのですが、実はこのCATにカード屋の利権とエゴが詰まっております。
このページは特に、お店を経営されている方に読んでいただきたい。読めば少なからずトクをすることが書いてあると思います。
カード取り引きに関する文中で紛らわしい語句を使い分けているので使い分けの意味を書いておきます。
- 【取り扱い】:一般消費者とお店の取り引き
- 【決済】:加盟店(お店)とカード会社の取り引き
VISAとMASTERのカラクリ
JCB、アメックス、ダイナースは単独ブランドのカード会社であるため、これらのカードを取り扱うためには各々の3社と個別に加盟契約をする必要があります。(AMEXの国内業務はJCBが行っているので実際には2社)
ですが、ビザやマスター系列(以降:V/M系)のカード会社は星の数ほど存在するため、全てのカード会社と加盟契約をすることは現実的に不可能です。
しかし、「このVISAは使えるけどこっちのVISAは使えない」というようなお店は存在しません。
ウソくさいですか?
そう思った方はふたつ前のクレジットブランドのページを読み直してください。
病院でも新聞代でもVISAが使える♪
というCM(2005年頃)。
あれは三井住友カード株式会社のCMであり、ビザインターナショナルやビザジャパンのCMではありません。(建前上はVISAインターナショナル)
実はここに先のカラクリがあります。
病院でVISAが使える理由は、三井住友カード㈱(以降:SMBC)が個々の病院と加盟契約をしているからであり、新聞代でカードが使える理由も同じく新聞販売店と加盟契約をしているからです。
そして、SMBCはVISAカードの決済業務を行う資格があるため、VISAカードに区分されるカードは全て取り扱いが可能になります。
という2段階を踏むことによって、『~VISAが使えるぅ♪』となるわけです。
厳密には少々意味が違いますが判りにくい業界用語なので便宜上、「資格」とか「代行」という語句を用いています。
ここで聡明なアナタはお気づきになるかと思いますが、VISAの決済ができるカード会社は何もSMBCだけではありません。他の銀行系カード会社や一部の信販系カード会社でも決済はできます。
このことについて次のことがいえます。
- VISAの取り扱いをしたければVISAの決済ができるカード会社と加盟契約をする必要がある
- VISAの決済ができる1社と加盟契約をしておけば全てのVISAカードの取り扱いができる
お店やってて既にカードの取り扱いをしている方は、とんでもないコトに気づきますよね(笑)
加盟店の利便性は無視
一般的なお店ではいろんなカード屋のステッカーがベタベタと貼ってあります。ステッカーが貼ってあるということは、そのお店が個々のカード屋と加盟契約をしているということです。
でも、ベタベタ貼る=複数のカード会社と加盟契約をしなくても先のとおりVISAは使えるです。
たくさんのカード会社と加盟契約をすると、お店においてあるCATにもカード会社の識別が登録されます。お客さんがいろんなカードを持ってきてもCATが登録されているカード会社毎に自動的に振り分けるのでお店側に負担は発生しません。
ならいいじゃん・・・というものでもなかったりします。
カード会社毎に自動的に振り分けられるというコトは、決済するカード会社は利用者の持ってきたカード毎にバラバラになります。
バラバラになれば事務処理の手間が増えます。
経理の立場で考えてみましょう。
本来は1回で済むはずの売上と入金のチェックが契約しているカード会社の数だけ増えるわけです。もちろんですが、この作業には全く意味がありません。
要は、労力のムダ、時間のムダ、人件費のムダ
CATは置いた者勝ち!
VISAとMASTERについては直接的に加盟契約のないカードでも決済可能なV/M系カード会社1社と加盟契約をしていれば取り扱いに問題ないことは理解できたと思います。
そこで疑問がでてきます。
- 加盟契約をしていないカード会社はどうやって利益をとるのか?
- 決済をしているカード会社は他所のカード会社から利益がとれるのか?
その謎がCATにあります。つまり、ここからがこのページの本題です。
CAT端末は宝の山?
カード売上の利益(いわゆる5%の手数料)は、基本的にはカードを発行したカード会社のものですが、決済の過程で代行業者が介在するとマージンが発生します。
そこで、決済手順の流れを見ながらマージンの発生箇所を見てみます。
- CATのデータを管理している会社 (情報センター)
- カードを発行したカード会社
- 加盟登録がない場合、同じブランドマークを取り扱っているカード会社
[1]~[3]の順に売上のデータは廻されます。
加盟登録のないカードで売上をあげる場合、お店の側が任意に決済カード会社を選べますが、CATを設置した場合は設置したカード会社が自動的に選択されます。
とすると、CATを設置したカード会社は星の数ほどあるV/M系の大多数からマージンを抜くことができるようになります。
こういう理由によって、V/M系のカード屋はCATを置きたがるわけです。言い換えれば、他のカード会社が設置したCATに自社の登録がないとマージンを抜かれてしまいます。
こういう理由によってV/M系のカード屋はCATが置いてあるお店ほど加盟契約をしたがります。
なのでカード端末を置くとカード屋の営業マンがゾロゾロと来るわけです。
エゴのカタマリである日本人は、あの手この手を使って既存のCATを自社製に交換させようとしたり自社のCATに他所のカード屋を登録させないように考えます。・・・・(元記事の2004年頃では業界の反則行為らしいです)
CATのデータ集計センター
端末のデータを管理している会社はCATに登録してある全てのカード会社からマージンが抜けます。
まぁ、それで成り立っている組織なので「抜く」という表現はおかしいですが、とりあえずはマージンです。
代表的なものにはこんな会社がありますが諸事情で詳しくは書きません。(ちなみに守秘義務ではないですよ)
JCBもCATが好き
JCBはブランド自社発行の会社=非V/M系です。よってJCBはV/Mの決済代行はできないのでマージンは抜けません。
となるとCAT設置の「旨み」が無いのでは? となります。
CATの情報を集計管理するセンターは幾つかあるのですが、その中のひとつにJCBの私物に等しい子会社があります。
もちろんJCBが設置するCATは全てその情報センターに接続されます。
いやはや、もう手がつけられません(笑)
とにもかくにもカード屋はCATを置いてしまえば勝ちであるといえましょう。
おまけな余談
種類にもよりますが、複数のカード会社と加盟契約するメリットもあるにはあります。
例えばカード会社が発行している商品券は加盟契約をしていないと取り扱うことができません。懸賞で当たったりお祝いで貰ったりと、使いたい商品券がサイフに隠れている人は結構いると思います。
商店主向け:ウチの店もカード取扱したい
カードの取り扱いを開始したいときにどうしたらいいかわからなければ、とりあえずJCBに電話することをオススメする。
子会社がバラエティに富んでおり、その中にまとめて面倒みてくれる会社があります。
アンケートによるご意見が多かったのでオマケで記載。